築44年木造2階建。
一歩踏み入れると70年代昭和の空気。それだけでいつもよりテンションが上がるのは私だけでしょうか?
かつて祖父母が住んでいた家や、修行時代に住んでいた借家を思い出す。
ご依頼主は私と同世代のご夫婦。
中古物件のリノベーションをお任せする業者さんを探しているという相談を受けたのが始まりでした。
物件の下見に同行し、物件を決めるところからお手伝いをさせていただき、最終的にリノベーションのプランと家具製作をさせていただきました。
どこか懐かしい昭和の雰囲気を楽しみながら暮らせる、そんな空間をデザインしました。
▪️ダイニングキッチン
↓After
↓Before
日中でも暗い印象だったため、備え付けの食器棚を外し、壁を開口して施主様が探してきたアンティークの建具を取付け。
天井と床を新規に張り替え、壁は白に。
グリーンのレトロなキッチンはあえてそのままにし、調理器具などの収納を補うためにタイルトップのカウンターを製作。
キッチンは変えず調理家電の収納スペースを確保し、引き出し収納を追加。
キッチンは蛇口だけ付け替えるという小技を使用。
キッチン照明は直管蛍光灯からスチール製の可動式ブラケットに変更。
調理台にもなるタイルトップのカウンター。
ダイニングチェアはボーエ・モーエンセンのJ39。素朴で主張しすぎないデザインが建物の雰囲気に合う。
照明でもレトロで懐かしい雰囲気を演出。
リビング(和室)との仕切りは施主様と選んだアンティークのガラス入り建具に変更。
ダイニングが明るくなり、リビングの奥行きを感じるので空間が広く見える。
施主様が以前から使用していた古い水屋もちょうど収まるようにしました。
手を着けると予算の大きい窓周りやキッチンをそのままでもおかしくない(逆にそれが良い味になる)デザインにすることで、全体の工事費用を抑えたダイニングプランとなっています。
▪️リビング
↓After
↓Before
内装が変わってなさすぎでしょうか?(笑)でもいいんです。大事なのはBeforeとAfterの振り幅ではなく、いかにライフスタイルを充実させるかですから。必要のない改修は省いていくことも大事です。
座敷との仕切りを襖からガラス入りの建具に変更しています、これだけで採光性能が増し、かつ座敷の奥行きを感じる為、リビングが広く感じます。畳をフローリングに変えなかったのは座敷との連動や縁側とのバランスも考えた結果です。
押し入れを無くし、テレビボード(DJブース)を置くスペースに改修。
縁側(南側)からリビングの和室を見たところ。テレビは壁掛けに。
ソファはカイ・クリスチャンセンのペーパーナイフソファ。北欧デンマークのデザインでありながら和室、畳との相性が抜群に良い。
畳に合わせたオリエンタルな手織りのラグマットがアクセントに。
和室×ターンテーブル。
軽量な籐のPopoスツールは、ちょっと縁側に持っていったりという使い方も。
イサム・ノグチのAkariシリーズ。和のイメージそのものなのに、どこかモダンなデザイン。
フランク・ロイド・ライトのタリアセン1。
和室を楽しむ。そんな灯りをセレクト。
座敷との境に取り付けた古い建具。
欄間×BOSE
天袋を潰した後にレコードジャケットの飾り棚を製作。(バービーボーイズ!?)
床の間のある座敷。
物件購入の決め手になった縁側。
雪見障子は元のまま、アルミサッシのガラスを透明に変更しただけで、ほとんど手をつけずに済んだ。
麦茶が飲みたくなるロケーション。
▪️玄関
↓After
↓Before
タイルの配色がうるさかったので、一部を剥がしてモルタル仕上げに。
既存の下駄箱はそのまま活かし、痛んでいた戸を作り変えた。
壁掛けの照明を昭和初期のアンティークに変更。
玄関戸は引戸から開き戸に作り変え。
扉上にあるブロンズ色の欄間が元々の玄関戸の面影を残している。
▪️洗面台、風呂場、トイレ
↓After
↓Before
洗面台は施主様が骨董店で購入したタイルの洗面台に変更。
ユニットバスを造作の風呂場に作り変え。
写真はないですが、便器も新しいものに交換。
▪️外観
↓After
↓Before
アプローチを削って駐車スペースを追加。
外壁に塗装した木材を取付ています。
▪️初期プランのイラスト
細かい部分の変更はあるものの、デザインの方向性は変えずに進められました。
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リノベーションを検討する際にまず気になる予算の問題。
新築の家と比べると性能面で劣る中古の家に新築同様の性能を求めようとすると、当然、予算が膨らみます。
デザイン面でも同様に、手を着け始めればキリがない状態になり、その分予算は膨らみます。
その結果、新築を建てるのと変わらない金額になってしまってはそれが魅力的な選択肢だとは思えないでしょう。
やはり、中古物件を購入してリノベーションするメリットは予算面にあると思います。今回のリノベーションは必要な性能と必要なデザインのみの改修を行い、その分中身に予算をかけるというプランです。
まず全体の予算を決め、次に家具と照明を含めたインテリアのデザインを決め、残りの予算で建物の改修を行いました。
最初にインテリアのデザイン(方向性)を固めることで、リビングは畳のままでオーケー!キッチンはそのままでもアリじゃない?!銀のアルミサッシも天井の柄もデザイン的に全然アリ(むしろそれが良い)!という判断ができます。その結果、改修する部分を絞れるという結果に繋がります。
一方、インテリアのデザインが固まってない場合、とりあえず気になる部分は全て手を着けなければならない気持ちになってしまうと思います。
住み方同様、リノベーションも多様化の時代になってくると思います。その中の一つに、インテリアの視点からスタートする工事費用を抑えたリノベーションという選択肢があっても良いのではないかと思います。
平成が終わろうとしている今、昭和な家に心惹かれる今日この頃です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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