春。3月初旬。
築30年の木造平屋のリビングダイニングにおいてリノベーションと家具プランの内覧会を開催しました。
予想以上の反響があり、多くの方々に私たちの仕事を見ていただく良い機会となりました。
今回の件、ことの発端はリノベーションを兼ねた家具のプランニングをご相談いただいたことでした。
その内容はご夫妻共にお仕事をリタイヤされ、必然と家にいる時間が長くなったことがライフスタイルを見直すきっかけとなり、くつろげる空間を根本的に考え直したいとのこと。
これまでのインテリアプランニングは出来上がりの空間に最適な家具をデザインするという形でのご依頼をいただいておりましたが、今回はそれよりも前の段階、内装のデザインから携わるというデザイナー冥利に尽きる仕事をさせていただきました。
ということで今回はインアンドエムスクエア設計事務所の市﨑信寛氏と組み、建物の設計・施工をインアンドエムスクエアさんで、全体のデザイン監修・家具製作をSTAMP FURNITUREでするという内容になりました。
それではリノベーションとインテリアプランニングをご紹介させていただきます。
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「南側リビング」
ダイニングから南側を見たところ
・リビング側は既存の天井を抜き、最高4mの吹き抜けに。
・天井には節がほとんど無い信州産松。
・壁は漆喰仕上げでテクスチャーのないフラットな仕上げ。
・床はオイルフィニッシュした北海道産のクルミ無垢材。
・天井、壁、床に断熱材を追加。
リビング天井。天井高4mの開放的な高さと寄棟の勾配からできた傾斜が立体的である。
吹き抜けにしたことで露出した天井丸太の梁はあえて表面を磨かず、この家を建てた当時の墨付けも意匠として残した。
照明はジョージ・ネルソン氏のバブルランプを大きさ違いで三灯配置。空間にモノを置くことで、奥行きを認識し、さらに広さを感じていただけるようにあえて大きめの存在感がある照明を配置した。和の空間との相性の良さも素晴らしい。
内障子の上に内蔵した間接照明が太陽光のように自然に天井を照らす。
漆喰壁に映り込む明かりは独特な柔らかい光となって空間を演出する。
太陽光に程よいフィルターをかけてくれる内障子はタモ材で製作。
3Pソファは今回のプランニングで新規にデザイン。落ち着いた和の空間に合わせて直線を主とした安定感のある形にし、脚を軽快にすることで重すぎないデザインバランスにした。
優しい色と木目が特徴のクルミ材フローリングの上にはアフガニスタンのハンドノットラグ。オリエンタルな濃赤のラグが空間の引き締め効果に一役買っている。
フロアランプをソファサイドに設置するために、ソファ下の床に予めコンセントを設けている。
LE KLINTのフロアランプ。可動式のアームにより手元もしっかり照らすことができる為、読書灯としての機能も果たす。
新規でデザインしたリビングテーブルはクリアオイル仕上げに。和のニュアンスを強めにし空間全体のバランスを微調整。
ソファの脚は風が抜けるような軽快なイメージ。
オーダーメイドのテレビボードは定番となったサイドボードタイプにし、デンマークのヴィンテージ家具を意識したデザインに。テレビボードの中にチューナーやインターネットのモデム、無線ルーターなどをまとめて収納。
シェルフには電話と家族写真などを置ける飾り棚。よく使うものを収納できる小さな引き出しも。
生き生きとした空間を作るには大きな観葉植物が効果的。吹き抜けの天井高に負けないよう2m超えのドラセナ・ソングオブジャマイカを無機質なセメント系の鉢と共に。
リビングのキャビネットはチーク材を使用し、リビングに落ち着いた北欧のヴィンテージ感を取り入れた。
「西側」
・ソファとダイニング間の会話も弾む距離感。
・既存のサッシを付け替え、内障子を追加。
・窓際にはパソコン用のデスクを。既存の柱を利用して天板を固定した。
・エアコンには目隠しの木製格子を取り付け。
パソコンデスクを照らすアングルポイズ社のウォールランプ。ちらりと光るロゴ等、作りの質感が良く、とても雰囲気が出ている。
フレームが引き立つ漆喰の壁。フレームを照らす為に可動式のダウンライトを天井の指定位置に設置。ポスターは雰囲気に合わせてセレクトしたピカソのドローイング。
「東側」
・玄関の廊下へ繋がる格子建具は上吊りの引き戸に変更。クリアガラスにすることで空間を広く見せることができる。
低いダイニングの天井からリビングの吹き抜けへの高低差のギャップにより、リビングの開放感がとても引き立つ。
照らされるインターホン。何気ない演出だが漆喰の壁だとそれがオブジェのようになるから不思議だ。
「北側ダイニング〜キッチン」
・ダイニングは既存の天井より300mm低くし、天井高2200mmと低めに設定。
・北側の壁付けだったキッチンを対面式に変更。キッチンは特注にて製作。
・勝手口を無くし、代わりに掃き出しの窓を新規に取り付け。
近所に住むお孫様たちともよく一緒にお食事されるため、ダイニングテーブルは幅2200mmで6人がゆったり座れるサイズに。奥行き寸法は間取りの都合上850mmと若干スリムなサイズにした。
出入りしやすいようにテーブルの脚は内脚のシェーカータイプを新規にデザイン。
ダイニングチェアはカイ・クリスチャンセン氏がデザインした「HANDY」。通常より座面が30mm低いロータイプにすることで、天井の低さと相まって落ち着くダイニングに。
ペンダントライトはポール・ヘニングセン氏の「PH5-4 1/2」をセレクト。直径が466mmと同氏の名作ランプPH5(直径500mm)より小さいため、奥行きのスリムなダイニングでも頭上のストレスがない。しかし、全体のボリュームは大きく、デザインの存在感はさすがの一言。計算された光がダイニングシーンを華やかに演出する。
オーダーメイドの食器棚はホワイトオークのオイル仕上げ。
吊り戸棚は壁に固定。埋め込んだLEDライトは壁のスイッチでオンオフ可能。
サイズ違いの引き出しと可動式の間仕切りでたっぷり収納できる。
天板はお手入れしやすいメラミンを使用。グレーとベージュの中間の優しい色をセレクト。
一番のお悩みだった暗い北側の台所は広々と明るく。使用頻度の少なかった勝手口を塞ぎ、大きな掃き出し窓にすることで、北側でも明るいキッチンとなった。
縦型ブラインドは一見すると和紙のようだが、ガラス繊維をPVCコーティングした素材なので簡単に拭き掃除ができ、キッチン周りの使用でも気にならない。和紙のようなデザインはリビングの建具との統一感も狙ったセレクト。
オーダーメイドキッチンのステンレストップ。
キッチンにはIH、食洗機、浄水器を取り付け、面材は家具と合わせてホワイトオークを使用。
キッチンの天井にはφ200mmの小ぶりなLE KLINTのペンダントライトを2灯。プラスチック製なので外して水洗いできるところも◎。
プランニング詳細の説明は以上。
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今回のプランニングに関して空間と家具のトータルデザインを考えた時に「親日家が住む北欧の家」というコンセプトが浮かびました。そのため、木材に関しては杉檜の使用を極力避け、松やタモを多く使用することで、どことなく日本ではない雰囲気に寄せてみました。
そして、それ以外に心がけたことは照明の使い方「個々に寄り添う明かりのおもてなし」
家族が大勢集まる憩いの場としてはもちろん、それぞれが別のことをしていてもちょうど良い距離感を保った心地良さを持っていただけるような空間に。
そしてその個々のくつろぎの中には一人一人に寄り添った明かりが存在するということ。ソファで読書をする明かり。ダイニングで会話をする明かり。キッチンで料理をする明かり。デスクで調べ事をする明かり。そこに明かりが灯ることでその場所にパーソナルな居心地の良さが生まれるということ。
その一つ一つの明かりがそれぞれの場所を居心地の良い場所にした結果、部屋全体が居心地の良い一つの空間になるというのが明かりが持つ力だと思います。
家で過ごす時間が今までとは違う特別な時間になったと感じていただければ幸いです。
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最後に、ここまでリノベーション前の写真を一枚も掲載しておりませんでした。
それはリノベーションで大切なことは施工前と施工後の振り幅ではなく、施工後でいかにライフスタイルが充実したかということだと思っています。しかしリノベーションのご紹介なので念の為、施工前の写真を掲載させていただきます^^;
「リビングから北側キッチンを向いた写真」
「施行中」
どうにでもなるという結論です(^^;;
どうにでもなるからこそ、リノベーションをする際に大事なことは、本当に必要な部分に予算を掛けた提案ができるかどうかだと思います。
ちょっとだけ改装するのか、大幅に改装するのか、どんな家具を置くのか、どんな照明を置くのか。そしてその結果どんなライフスタイルが待っているのか。
ゴール地点を明確にし、予算を組むことによって、もっとも理想的な結果を生み出せると思います。
家具プランやリノベーションなどにご興味のある方は当店へお気軽にご相談くださいませ。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。
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イン アンド エムスクエア設計事務所 Webサイト
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