一週間後の休日、持ち主の元を訪ねる日が来た。

この一週間、いろいろなことを考えた。古い郵便局で仕事をする日々、展示場の雰囲気、まだ建物の中すら見た事ないのだが、人づてに聞く情報をもとに想像は膨らみ続け、あの場所で仕事をする以外に考えられなくなっていた。

借りれる確証はどこにもないのだが、不思議とどうにかなるような気がしていた。

それほど自然に流れるように今日を迎え、導かれるような空気が漂っていた。

事前に地図で調べていた家の少し離れたところに車を停め、玄関の前に立ち、いざ呼び鈴を鳴らした。

程なくして一人の男性が出てきたが、その顔は見ず知らずの男を見て少し驚いているようだった。

僕は名刺を差し出し、まずは怪しいものではないことを必死に伝え、ここにたどり着いた経緯を話した。

そして本題へ、僕は郵便局の懐かしい佇まいがとても気に入ったので、その雰囲気を活かした家具工房をする為に建物を貸して欲しいと相談した。

すると、一通り聞き終わったあとの男性の次の言葉に驚いた。

「そういう形で使ってもらえるなら、是非使ってください。」

・・・

『使ってください』?

なんと奇跡的にOKだったのだ。それも即座に。あの時の信じられない嬉しさは今でも思い出すだけで興奮してしまう。

こんなに話が早く進むなんて信じられなかった。後々分かったことだが、持ち主の男性にとってもタイミングが良かったということだった。やはり、僕はここに来るべくして来たのかもしれない。

あまりにあっさりと借りられたので、読みごたえに欠ける展開になってしまい申し訳ないが、とにかく夢にまで見たあの旧郵便局舎で自分の仕事が始められることが決定したのだ。

つづく

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